コジ・カーターは時計を見た。六時を十五分ほど回っている。
秋が冬になり、夜は取り分を増す時節だが、それでも外は明らんでくる。
書きかけの原稿と参考資料から目を離して、息抜きを探す。
原稿。コジはいまでも「本郷通り、」の復刊を夢見ているが、
さし当たり、生きの良い仲間の雑誌に寄稿するのも悪くないと
キーボードを叩いていた。
雑誌の名は「篝火」。ふと彼は、「本郷通り ブログ」を検索すると
このブログにたどり着けたことを思い出した。
「篝火」に当時の仲間が関わっている以上、ブログがあってもおかしくない。
試しに、「篝火 ロシア詩」で検索してみる。
やはり。
「本郷通り、」創設者の一人であり、「篝火」の発起人でもある
バルドスが、紛れもない彼の文体でブログを書いていた。
雑誌のテーマからどこまでも逸脱していくのが彼の流儀だ。
そしてイッペーオはサンペイに名を変えていた。
知り合いから噂は聞くが、元気そうで何よりだ。
懐かしく思えて、この「本郷通り、」ブログを久々に開いた。
いくつかの記事とともに記憶も甦る。
預かりながら印刷できなかった原稿も、そのまま
メールアドレスに添付ファイルとして保管されている。
コジは息抜きを終えて、「篝火」の原稿に戻った。
しかし、夢はここに置いてある。いつか拾いに来るだろう。