2010年11月20日土曜日

丘をおりる

バルドスは執筆の仕事をほぼ終えました。数々のご声援、ありがとうございました。特にショーンとアーニャの二人には心から御礼申し上げます。

それからモスクワのアレクセイ! あたたかいメールをいつもありがとう。一月遅れの誕生祝いも、胸にしみた。

もちろんまだ気を抜くには早い。必要条件をクリアしただけだ。より完全に近いものを目指す。

ケイシー、終わったらソーニャとピクニックに行こう。

2010年11月19日金曜日

いずれは機械翻訳がとって代わるのかな

のんびりとやっていた「フランツ・シュテルンバルト」の翻訳も、ようやく第一部が終わって、これで半分弱(今のところ12万3千字くらい、原稿用紙300枚とちょっと)。というわけで一区切り、というか第二部の最初がどうも難しくて少し気力が降りてこない。

そもそも、今回やってみて知ったこと。ティークはもちろん作家であるけれど、詩人でもあって、ゲーテやアイヒェンドルフほど天才ではないにせよ、詩もたくさん残しているのに(Wikipedia DeではDichter, Enではpoetが紹介文の最初の肩書きになっているほど)、参考にしうる翻訳が全然見つからない。まあ、頑張ってロマン派詩集みたいなものを漁りに漁ればいく編かは見つかるのかもしれないけど、今探しているのは、小説内に収められた、必ずしも出来のいいとは限らない作中詩なのでちょっと難しいだろうな。

そんなわけで、暗中模索。それでもコツコツとやっているのですが、いつかこれを踏まえてきっと誰かがもっといい訳を生み出してくれたら、などという言い訳をすでにもうしつつあったり。そうは言っても、たまには難読の場所を必死に読んで正しく解釈できている気もするので、その辺くらいは、次の訳者(百年後くらいかな?)にも役立つといいのだけれど。

2010年11月10日水曜日

フィルムセンターへ行くべし

暫定偏執長代行・河岸です。
編集長はもはや名ばかり、摂家将軍の方がまだしも働いていただろう…と思われる状況にあるため、上記の「偏執長」なる記述は誤記でも何でもないんだぜ!

はあ。それはそうと。
11/9~12/26の間(つまり昨日から今年いっぱい)、国立フィルムセンター(NFC)で黒澤明特集が組まれているのをご存じだろうか。全監督作品30作に加え、脚本・脚色作品20作の総計50作品が一挙上映されるという、生誕百年に相応しい好企画なのである。

じつは今年度から、国立博物館・美術館のキャンパスメンバーズ制度がNFC通常上映にも適用になっている。
したがって本学学生ならばだれでも、学生証の提示だけでタダで50作すべてを鑑賞することができるのだ(…おっと、当ブログはべつにどの大学の所属だと表明しているわけではなかったか。加盟校の学生なら、と訂正しよう)
わりと早い時間から行列が必要だったり、マナーの悪い老人に苛立たされたりと決して快適な劇場とは言えないんだけれども、交通費だけで黒澤作品がスクリーンで観られる滅多にない機会を逃すなかれ。黒澤作品、とりわけ代表作を多く含む東宝作品はなかなか名画座ではかかりませんからね。

                       *    *    *

ついでに書くと、神保町シアターという三省堂裏手にある名画座では11/20~12/29にかけて小津安二郎の現存する全作品を一挙上映する。こちらは一本立てで学生料金800円なりが必要となるが、やはり貴重な機会であるから通うといいだろう。
 
というわけで私はこれから、19:00~の「素晴らしき日曜日」を観に京橋へ移動するのである。
 
 
NFC・黒澤特集ページ
http://www.momat.go.jp/FC/NFC_Calendar/2010-11-12/kaisetsu.html
 
キャンパスメンバーズ加盟校
http://www.momat.go.jp/campus/index.html
 
神保町シアター・小津特集ページ
http://www.shogakukan.co.jp/jinbocho-theater/program/ozu.html

2010年11月7日日曜日

届かない手紙

ボヘミアンのおじさんへ

 おじさん、元気ですか? 今どこに隠れているんですか? いつまで隠れているつもりなんですか?

 おじさん、正直俺は今しんどいです。おじさんが隣にいて探偵稼業のイロハを手取り足取り教えてくれたころが懐かしい。あの日、ひたすら張り込みと尾行を繰り返して、やっと「本郷通りのアル・カポネ」の不正を暴いたとき、おじさんは「お前はもう一人立ちできる」って言ったけど、俺はまだ一人では何一つ解決できていないんだ。

 「バラ色の街角に消えた女」は迷宮入りしそうです。いや、肝心なのはそういうことじゃない。肝心なのは、俺自身がそこに迷い込んで、抜け出せなくなっているってことなんだ。顔も名前もわからない女の行方を、トミーの気違いじみた熱狂に伝染したみたいになって、むちゃくちゃに探しまわっているうちに、何だかあの幻の女が俺自身の探し人であるような気がしてきて、トミーが最後に見たという後ろ姿がいつも昼となく夜となく目先にちらついているんです。
 あの女の振り向いた顔がむしょうに見たくて、見たくてたまらなくて、手がかりは何もないけど、明日こそ何か見つかるかもしれない、何か発見があるかもしれない、そんな根拠のない希望だけにたよって、今もまださまよっているんです。

 おじさんは一年前、「ホシを掴むには、その目的地にホシよりも速く行くことだ」って教えたけど、この事件については無益な忠告でしたね。

バルドス

2010年11月5日金曜日

友への手紙

ケイシーへ

 元気でやってるか? 執筆は順調かい?
 君が小説を書くために、背水の陣をしいて、どこぞのホテルに引き籠ってから、もう数か月が経つんだね。

 みんなは元気でやってる。ソーニャの秘書っぷりもなかなかさまになってきた。今ではうちの探偵事務所の顔だよ。相変わらずショーンのことをよくからかっている。君がいないのを寂しがっているぜ。でも、書き終わらないかぎり帰ってくるな、と強がりを言っている。

バルドス