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2010年8月25日水曜日

ブリキの太鼓

自分ばかり書いて…という気もするのですが、まあいいだろうということで。
ようやく『ブリキの太鼓』を読み終えました。『ヴァインランド』『賜物』と、河出の全集から3作読破しましたが、その中でもボリューム感は断トツで、疲れたし、「もう読みたくない」という気持ちに駆られること幾度、という感じではありながら、やはり読まれるべき作品だな、と。
戦争を扱った作品ですが、目を逸らしたいけれども、目を向けるべき、そしてどこか抗いがたい魅力がある、というまさに戦争に対して人が抱く態度をそのまま感じたとも言えるでしょう。そして本としては長すぎるけど、戦争を一人の作家が描くにはこれでも短すぎるかもしれない、などと思いながら読みました。
グラスの調理法がまた見事で、このグロテスクさと、少年のクールさ、しかし読んでいてこのクールさがかなり客観性を欠いていると気づくわけですが、そうしたものが不気味ながら魅力的です。モダニズム(意識の流れ)やドイツの伝統(教養主義)をちゃかすその態度もまた戦後的です。そうした時代の記録、文学史の記念碑としても価値があるでしょう。

まあ、体力があるうちに読んでおくべき本のひとつではないかと。それにしても、池内さんのこの訳ほか、ここ最近、優れた翻訳家が、それでも必死にならないと太刀打ちできないような力作の翻訳が続いていて、読者としては大変だと思いつつも嬉しい限りです。もっと若くて、先達に負けない訳者がどんどん出てくるといいですね。
(と、ここで一つ宣伝を。その若手翻訳家として大活躍中のFさんから今回も「本郷通り、」に原稿を頂きました。ファンの皆様はお楽しみに。)

2010年7月11日日曜日

ブックフェア

行ってきました、ブックフェア。

知り合いに会うのではないか、などと思ってもいたのですが、あれだけの人数と、またこちらも本をあれこれ見るのに夢中で、結局だれも見かけないままに一日過ごしました。

多少は電子書籍や端末なども覗きつつ、また児童書なども見てみつつ(デンマークの絵本なんか、もっとじっくり見てもよかったかな)、メインはやはり人文書や語学書。
筑摩、河出、平凡社、白水社、三修社、意外なところだと明日香出版やベレ出版、それに国書刊行会や法政大学出版の本などにも目を奪われて、しかし重い荷物を持ちかえる準備をしていなかったのもあり、あまり買えずにすごすごと帰ってきました。特に国書はいろいろ欲しかったです。
それでも一世代前の研究社羅和辞典がバーゲンで売っていて、これは! と思って買ってきました。新しい羅和の方が例文が多くて個人的には好みですが、やはり辞書好きとしては一冊は持っておきたい本でしたし、これだけでも行ったかいはあったかな、と思います。

でもなにより、あれだけの人が夢中になって本を漁っているのを見ると、まだまだ人は活字文化に(絵本などそれ以外もあるにせよ)飢えているのだな、と嬉しくなりました。一方では時代の進化やメディアの変化に目を向けないといけないとも思いますし、それはそれで積極的に向き合いたいものですが、他方、文字文化が培ってきた歴史の重みが、それらによって簡単に吹き飛ばされることはないはずで、まだまだ表現する者(とりわけ個人)とされる者をつなぐ一番の媒体は文字であり続けるのだな、などと再確認しました。

うまいこと、書き手と読み手が共存し、その間の媒体が健全に維持される状況であり続けて欲しいものです。僕らもできることはやらないと。